着ぐるみ最終日。

 朝から電車に乗ります。


 乗り換えて現地到着。



 お店についてすぐに着ぐるみ装備です。



 今日も一日この顔です。



 おねえさんに手を引かれて売場に出ます。


 昨日と同じように幼女がいきなりわたくしの股間に顔をうずめたり手を押し付けてきたりします。


 わたくしは汗だくになりながらある真理に到達します。


 やはり人間は見た目なのだと。


 というか人間ですらなくケダモノの着ぐるみですが。


 数人の幼女に「好き」と告られてお昼休み突入です。



 カップめんを食べます。


 みそ。



 しょうゆ。



 そして後半行ってみよう。


 ひたすら握手、ハイタッチ、バイバーイ、のパターンを繰り返します。


 何十人もの人に記念撮影を求められます。


 何度も後ろにまわったガキに尻尾を引っ張られます。


 そのたびにはるか頭上に位置する目玉に手の甲を当てて泣いている様子を演じなければなりません。


 つうか頭がでかすぎて耳まで手が届かないんですが。


 そして、今日も必死に中の人の正体を暴こうとするガキの声が聞こえます。


 ほんとは人間なんでしょ?


 ねえ、男? 女?


 あ、首から髪の毛が出てる。長いから女のひとだ。


 ええそうあんたたちのために女っていうことにしといてもいいわよ。


 真実は藪の中ってことで。


 つうか真実なんてないから。


 あたしがケダモノ本体だってこと以外。



 汗まみれになりながら四本指の手で握手をしてゆきます。


 ひとり、けっこう強めにというかフルパワーで股間にパンチしてきた幼女がいました。


 でも大丈夫。


 股間は厚めのウレタン樹脂で覆われてるから。


 貧乳女子に下駄履かせるパッド並みに覆われてるから。


 パッドというよりある意味ファールカップみたいなもんだから。


 幼女が全力で殴っても痛くもかゆくもないの。



 というわけで夜、仕事終了。


 自分はこれほどまでに子供たちに必要とされているのかと多大なる勘違いをしてしまうようなお仕事でした。


 とにかく子供が群がってくるの。


 この仕事って鬱の人にはすごい効きそう。


 だって汗すごいかくし、みんなかまってくれるどころかキャーキャー言ってちやほやしてくれるし。



 しかしこのまま多大なる勘違いをしたまま帰るのもまずいかと思いましたので、すべての作業終了後、来たときの服装で売場に出てみました。


 今日一日見ていた世界よりははるかに視界が広い世界の中で、さっきまでわたくしにキャーキャー言って群がっていた子供たちは、私の存在に気づきもしません。


 こちらは条件反射的に手を振ったり握手しようとしたりしそうになるのですが、風呂上り並みに汗に髪を濡らしたただのおっさんがそんなことしたらけっこう面倒なことになります。


 ちなみに、売場のすぐ隣でステーキの試食販売をやってたおねえさんはわたくしの存在に気づきもしません。


 あれだけ何度もステージの間わたくしのずれた手袋をにこやかに直してくれたというのに。


 というわけで黙っておねえさんのところでステーキを試食してから帰途に着きました。


 なんかね、すっぴんのギャル曽根ってこんな気持ちなんだろうかとか思った。


 ちなみに昨日と今日の日記で着ぐるみにモザイクかけてるのは守秘義務とかそれ以前に子供の夢を壊してはならないというプロ意識によるものです。


 いやホラ万一このブログを子供が見て、中の人このおっさんだったんだ、とか思っちゃうとまずいでしょ。




 あ、そうそう。


 帰る途中に寄ったお店の前で人だかりがしてたよ。



 これなんだけどね。


 マネキンの中にひとがひとり混じってるの。



 ぜんぜん動かないの。



 なんか自分が今日やった仕事とむちゃ近いけどむちゃ遠いような気がしたの。


 でもすごいなあピクリともうごかないもん。


 さて電車に乗ります。



 途中、新大久保のバイト先に寄ってみました。


 着ぐるみのバイトやってきたと社長に報告すると、楽しそうにまかないをご馳走してくれました。


 グリーンカレーと電子レンジで作った卵焼き。



 スーパードライも飲ませていただきました。


 社長にこれから飲みに行こうといわれ、閉店まで店にいました。