朝っぱらの王者ターちゃん。


 午前三時半に携帯電話が鳴った。

 仮眠していた僕は慌てて起きて電話に出る。

 山田さんだった。

 ああこれはありがたいなあこのまま朝まで寝ちゃうところだったよう僕は、などと思いながら僕は山田さんにどうもーなんて言ってみる。

 おやすみのところすみません。いま白石さんのよく知ってる人と飲んでて、その人が話したいって言うんでかわります。

 寝ぼけたまま誰だろう? などと思ってたら違う人が電話に出た。

 もしもし、たーです。昇さんですか?

 たー?

 誰?

 寝ぼけてるせいかよく聞き取れない。

 誰だこの声は確実に聞き覚えがあるけど思い出せないぞ。

 今ひとつ誰かわからないので会話がかみ合わない。

 誰だ誰だ誰だ誰だ?

 しばらくとんちんかんな会話を交わしてると再び山田さんが電話に出た。

 誰ですか?

 僕がそう聞くと山田さんは言った。

 ターですよター。パヤックレック・ユッタキット。覚えてませんか?

 ええええっ。

 元ラジャダムナンスタジアム・スーパーライト級王者のパヤックレック・ユッタキットさんだったのお。

 山田さんの話によるとターさんは現在日本にいてK−1MAX日本代表決定トーナメントに出場するHAYATO選手の指導をしてるらしい。

 ごめんよごめんよごめんよごめんよう。

 わかんなくてごめんよう。

 つうかわかんねえよあんた日本語の発音上手くなりすぎだよ。

 相対的に比較して俺のタイ語発音レベルをはるかに超えた日本語の喋りっぷりだよ(お歌は除く)。

 てっきり日本人だとばかり。