ポスティング。

 日雇いバイトの内容はポスティングだそうです。
 ボスティングといっても野球選手や公共事業に対する金額を入札したりするのではありません。
 自転車で郵便ポストにチラシを入れてゆく仕事なのです。


 神奈川県の藤沢市まで電車で行きます。
 たぶんこの仕事を引き受けなければ一生行くこともなかったかもしれない土地です。
 現地駅の改札前で担当の人とおちあい、バスで事務所に移動します。


 事務所で地図を渡され説明を受けます。
 仕事は十時から十八時までです。
 その八時間に一時間食事休憩を挟んで自転車の荷台とバックパックに搭載された千五百部近くのチラシを地図に示された指定の建物に投函してゆくのです。


 事務所から地図で示された場所までは自転車で十五分以上かかりました。
 一人で自転車をこいで行くのですが、よくぞ間違うことなく行けたなと思います。
 というかいきなりこのぜんぜん知らない土地を大量のチラシを持って自転車を漕いでいる自分といった状況なのです。


 いきなり心の準備もなく知らない土地で指定された仕事をこなすこの日雇い派遣という就業形態が、そのいきなりさゆえに新鮮でかなり好きだったりするのですが、いかんせんいきなりなものですから地図上に指定されている建物の入り口がわからなかったりします。


 それでもひたすら自転車を漕いて建物を探し郵便受けに投函していきます。
 このあたりは住宅地ですのですぐに自分がいる場所がどこなのかわからなくなってしまいます。
 畑も多いので建物と建物の距離も離れていますし、大きめの一戸建てと小さなアパートの違いがあまりはっきりしません。それゆえに迷いまくりです。


 迷ってたら雨が降ってきました。
 地図が濡れてへなへなになりはじめます。
 すかさずチラシでバインダーのように挟んで補強します。
 チラシも地図もビニール袋に入れているのですが、投函するときは取り出さなければならないので少しずつ濡れてへなへなからボロボロになっていきます。


 一応カッパを着ているのですが雨は一定の強度で降り続き、なんかもうシャワー浴びてるみたいに全身びしょびしょです。
 地図もボロボロからどろどろに溶けそうな勢いです。


 ずっと水浴び状態でハイになってコンビ二も見つからなかったので知らない土地でひたすら休憩を取るタイミングを見失ったまま五時過ぎまで自転車漕いでチラシを入れ続けました。
 雨もやまなかったので地図見るたびに軒下に入ったりしながらで時間かかることこの上ないのです。


 結局なんども道に迷いながら奇跡的に午後六時少し前に事務所に着きました。
 事務所の人に確認してもらったら七百枚ぐらいしか配れなかったみたい。


 電車に乗って新宿に戻っても濡れた服がまだ乾いてなかったので新大久保のバイト先で服が乾くまでいさせてもらいました。
 ついでに忘れてた先月のバイト代をもらい、まかないまで食って帰りました。


 ちなみに今日もデジカメ忘れて写真撮れませんでした。
 まあでもこれだけ濡れたのだから持って行かなくて正解。