ダブルタイトル

 数日前の夕刻、わたくしは携帯電話の近くから離れないようにしておりました。

 わたくしの携帯電話、ふだんはほぼ鳴りません。

 それがこの日、鳴っちゃう可能性があるのです。

 鳴っちゃう確率は11分の1。

 ええ、九州芸術祭文学賞の選考日なのです。


 以前にもこのブログでお伝えしたとおりわたくし、長崎県代表としてノミネートされておりました。
noboruchan.hatenablog.com

 つまり、九州各地区からノミネートされた11作の中から選ばれたら電話がありますからと事前に通達されていたわけです。

 ちなみに選ばれなければ電話などありません。

 その日がこの日なのです。


 しかし午後8時を過ぎて明日のお弁当の準備などしておりましても一向に電話など鳴りはしません。

 ああもう他の人の方がのぼるちゃんの作文より面白かったんだろうなと湯たんぽにお湯を入れ、床に入ろうとしておりましたら、



 まさかの着信。


 電話が鳴ってるということは選ばれたということです。

 すかさずあらかじめ一度、準備しておいた口上を頭の中で復唱します。



「佳作だったら頭に『暫定』」
「佳作だったら頭に『暫定』」
「佳作だったら頭に『暫定』」
「佳作だったら頭に『暫定』」



 口上の中のトッピング要素も4度ほど頭の中で確認したあと電話に出ます。



「……最優秀作品に選ばれました。おめでとうござい」






「謹んでお受けいたします。九州王者の名を汚さぬよう。粛々と稽古に精進してゆく所存であります」




 しまった間が悪かった。


 食い気味どころか、おもいっきり相手に最後まで発言させてない。


 沈黙。


 ああ滑ってしまった藝人として不覚。


 しかし数秒後。

 電話先の主催者様が苦笑する声が聞こえます。

 どうやら完全には滑っていなかったようです。




 というわけでのぼるちゃんの作文が第52回九州芸術祭文学賞の最優秀作品となりました。


 一等賞です。

 九州で一番です。


 と、言っても知らない人にとっては何だそれ? だと思いますので一等賞ゲットしたてホヤホヤののぼるちゃん自ら説明させていただきます。

 九州芸術祭文学賞とは九州に住んでれば誰でも出場できる作文選手権大会です。ルールは400字詰原稿用紙55枚以上60枚以下の分量で作品を完成させるということのみです。内容は何書いてもかまいません。一番面白いものを提出した人が九州王者に選ばれます。

 以上が年齢性別国籍を問わず誰にでもご理解いただける説明でした。

 もう完璧だね。

 他にいらん情報盛り込むと答えられないようなめんどくさい質問返ってくるけどこれなら完璧。

 さっき一昨年まで住んでた国境近くの僻地で工場から横流しされた非合法流通の焼酎持ち出してよく警察のドローンに追いかけられてたおねえさんにタイ語で説明したけど一発で理解してもらえたもん。おめでとうっていわれたもん。


(おねえさんが持ち出した焼酎が消費される酒宴で歌わされるのぼるちゃん映像)



 補足説明は九州の位置だけ。チョー完璧。無駄なし。


 というわけで第52回九州芸術祭文学賞最優秀作品こと九州王者に選ばれました。

 いやむしろ王者なので選ばれたというより王座奪取とかそんな感じです。

 九州なので九州プロレス王座みたいなものかもしれません。





 いやしかし、九州プロレス王座のベルトかっこいいな。九州芸術祭文学賞もこんなのくれればいいのに。

 ウソですいただけるものは何でもうれしいです。

 つうかのぼるちゃんストライカーなのでどっちかといえば打撃系の方か。

 九州でキックボクシングといえばUN-JK連盟

 しかしいろいろ調べてみたけどUN-JK連盟、チャンピオンベルトらしきものが見つからないぞ。

 残念。


 というわけでチャンピオンベルトをゲットした気になっております。

 なんですかねこの九州の頂点に立った感じ、ヤマトタケルノミコト感はんぱないです。

 チャンピオンっていいですね。

 もうずっとチャンピオンでいたいです。防衛戦なんかせずに。

 つうかないらしいです九州芸術祭文学賞の防衛戦。

 ずっとベルト保持してていいみたいです。

 ベルトはないのでタイトル永久保持。

 死んでもずっと第52代九州王者。

 そうだよな返せとか言われないよな。

 防衛戦やらないとチャンピオンであること自体忘れちゃいそうだけど。




 と、ここまで考えて思い出しました。

 俺、チャンピオンだったよ。

 すでに永久王座獲得してたよ。


 のぼるちゃん第12代日大王者でした。
whitestoner.g2.xrea.com

 でっかいブロンズを奪取しております。

 と、言っても知らない人にとっては何だそれ? だと思いますので四半世紀以上前に一等賞をゲットしたのぼるちゃん自ら説明させていただきます。

 日大文芸賞とは日本大学関係者なら誰でも出場できる作文選手権大会です。ルールは400字詰原稿用紙50枚以内の分量で作品を完成させるということのみです。内容は何書いてもかまいません。一番面白いものを提出した人が日大王者に選ばれます。

 というわけでのぼるちゃん二冠王となりました。

 ダブルタイトルホルダーです。

 複数タイトルといえば全日本プロレスのイメージがありますが、


 個人的には貪欲に海外までベルト獲りに行った高山勝成選手のような気持ちであります。

 しかしすげえなあ高山選手。

 この上さらに東京オリンピックの金メダルまで獲りに行こうとしてたんだ。

 つうか今でもまだWBAの王座獲りに行こうとしてるし。

 すげえ。


 あの中川翔子さんを軽く超えた貪欲さだね。


 そういった土台を踏まえた上でのぼるちゃんも第12代日大・第52代九州の二冠王者として高山選手を見習って貪欲に精進してゆく所存であります。



 以上が二冠王者からの報告でした。

(第52回九州芸術祭文学賞優秀作はその後、この雑誌に掲載されました)